― 本編『ちるらん 新撰組鎮魂歌』では様々な漢たちの生き様が描かれていますが、『ちるらん にぶんの壱』でのキャラクターや世界感について教えていただけますか?
鈴木 意外と漫画のまんまなんですよ(笑)。ただデフォルメしているだけではなく、ちゃんと本編の延長線上で日常生活を凝縮したものになっていますので、『にぶんの壱』に向けてキャラ作りをしているという感じはないですね。
梅原 最初は戸惑いましたが、隊士たちのワチャワチャガチャガチャとした本編にはない彼らの日常や楽しそうな気持ちが伝わればいいなと思います。 僕が演じている新八は、『にぶんの壱』では、ツッコミキャラであったり、空回っていたり、周りに振り回されるキャラクターになっています。
鈴木 何でしょう……落ち着きのない犬なんです(笑)。ボールを投げればボールに向かって行き、枝を投げれば枝に行きますし、「こっちにおいで」と言ったら飛びかかられるし(笑)。しかも、それが大型なもんで、ちょっと五月蝿い(笑)。基本的には何かしら新八が起こしていますね(笑)。
― 梅原さんご自身と共通している部分はありますか?
梅原 あまりなく、逆に自分には無い面が新八にはたくさんありますので、『にぶんの壱』で新八を演じる機会をいただいて嬉しかったです。今までこの新八のような役はなかったので、新しい役所だなと思いましたし、本当に楽しかったので、後半の収録が楽しみです!
― 演者のみなさんとは『にぶんの壱』のような楽しそうな共同生活ができそうですか?
鈴木 俺らは無理だな(笑)。
梅原 (笑)。
― 面倒な方がいらっしゃる?
鈴木 全員面倒臭いです(笑)。
梅原 役者さんはみなさんそれぞれに癖があるので……。
鈴木 一番困るのは裕一郎なんじゃね?
梅原 えっ!?
鈴木 みんなから「お前何とかしろ!」とか言われるぜ。
梅原 そうなりますよね(笑)。
鈴木 そこに(高木)渉さんとかが入ってくる……早く近藤さんに来てもらいたいです。
― おふたりが剣の達人だとしたら、『ちるらん』の中で闘ってみたい相手は誰ですか?
鈴木 自分が剣の達人というアドバンテージを持っているのならば、平助をボコります(笑)。沖田となんか戦いたくないじゃん!
梅原 (笑)。勝てなくても良いという前提ならば、僕は近藤さん。剣の達人だったら楽しいのかなと思います。
― もしおふたりが女性だったら付き合ってもいいかなと思うキャラクターは?
鈴木 俺、絶対誰でも嫌だ! これは声を大にして言わせてもらいますが、16巻まで読んで思いました。全員嫌だ(笑)。全員人格破綻者(笑)。それが面白いし、惹きつけられるんですが、絶対に幸せになれない。外から見ているくらいが楽しい。
梅原 適度な距離感は必要ですね。
鈴木 そうそう! 彼らがよくご飯を食べに来るお店や団子屋さんとかにいて、見てるほうが楽しい。実際に付き合うと絶対後悔する(笑)。『にぶんの壱』での町娘たち位がちょうど良いポジションだと思う。斉藤とかほっておいたら何処かに行っちゃうんだぜ。 出て行ったら帰ってこない土方とか、漢の友情ばかり見ちゃう近藤さん。飯をもくもくと食っている左之助。ずっと「近藤さん、近藤さん」って言っている沖田でしょ。なんだか訳わからないけど素振りばかりやっている新八だろ……ヤダわ!
梅原 確かに嫌ですね(笑)。結論は出ました……無理ですね。悪いヤツに惹かれるというのはわかるんですけど、現実に考えたら無理ですね(笑)。
― 本編『ちるらん 新撰組鎮魂歌』の中で印象深いエピソードはありますか?
鈴木 結構好きなエピソードが多いんですが、琴と左之助の師匠との一戦のエピソードが好きです。唯一、女性の武士じゃないですか! 男性とは圧倒的な腕力の差があるんですが、なんとかして技術でカバーしようとか、刀を握れないように指から落とすとか、技術面から闘っていったのに、縋っていったものから見放されてしまう。それでも武士であろうとする様とか、越えられない男性への憧れというものがありつつも自分は武士として生きていきたいとしている唯一の女性ですよね。そういったところが個人的に響きました。でも、一方で土方が優しい顔をしながら、自分の生き様の話をした時にやっぱり琴を武士としてではなく、女性として扱っているんだなっていうのがとても残酷だと思いました。圧倒的な差が性別の中にあるということを見せつけられましたね。良いエピソードに見えて実は残酷な話。でも真理ですよね。当人たちは傷ついてもいないし、救われているんですけど、見方を変えたら凄く怖い話だなって思います。
梅原 僕は、斉藤一の話ですね。斉藤が捉えられて土方が真っ先に助けに行く。その後みんなが助けに来てくれるんだろうなと思いながら読んでいたら、本当にみんなが駆けつけてくれる。そういう熱い展開が凄く印象に残っています。そして近藤の「大事な家族だ」というセリフから、色んな性格の彼らが何故か纏まっているのは近藤の懐の深さが理由なんだろうなというのが感じられました。
― 『ちるらん』の意味でもある“散る”ですが、おふたりは散り際とか生き様はどうありたいと思いますか?
鈴木 1巻の最初にあった土方の「誰にもできねぇ事をやんのがかっけぇんだろうが!!」のセリフとまったく同じ事を考えていたので、今回の役が決まった時、土方に呼ばれているんだろうなって思いました。誰に何を思われようがお構いなく、より自分の声の良い表現というものを突き詰めて、他人がやらないことをやったほうがいいじゃないかって、ずっと思っています。今、15年目に差し掛かりますが、その気持ちは本当に始めた頃から変わりませんね。
― 梅原さんはいかがですか?
梅原 お仕事をしていて、辛いとか上手くできないって悩む時も多々あるんですが、ひと月に一回くらい楽しかったと思えることがあります。そうするとまた続けたくなるんですよね。そういうことを積み重ねていくといずれ散り際になるかと思うのですが、その時に振り返って、あの時楽しかったなと手放しで言えることがあればそれでいいかなと思います。
― 最後に『ちるらん にぶんの壱』を楽しみにしてくださっている方へ一言お願いします。
鈴木 『にぶんの壱』をまず知っていただいて、『ちるらん』という作品にも目を向けてもらいたいです。俺たちも本編を理解した上で『にぶんの壱』を演じさせていただいていますので、本編の話を知っていただいた上で、アニメも楽しんでいただけると嬉しいです。そしてこのアニメをきっかけに沢山の方に『ちるらん』を知っていただいて、キャラクターたちと共に愛してもらえたら、その先にも繋がるのかなと思います。個人的にもTVシリーズで主役をやるのは初めてなので、座長としてこのメンツを引き連れて、できたら本編のアニメもやれたら嬉しいなと思っています。まずは『にぶんの壱』をみなさんに愛していただけることを第一目標にしています。そうしていただくことで、その輪というものが広がっていくものだろうなと、スタッフ、キャストも思っています。短いショートアニメですが、楽しんでもらえれば幸いです。全力をもってフィルムを作っていきますので、宜しくお願いいたします。
梅原 今回のショートアニメ『にぶんの壱』で初めて『ちるらん』に触れる方もいらっしゃると思います。この作品が本編に興味を持って貰えるひとつのきっかけになれば嬉しいです。本編も読んでいだだけたら、僕たちキャスト一同と同じく、『ちるらん』をアニメで観たいという気持ちになるかと思いますので、その機会をいただけたら嬉しいなと思います。まずは『にぶんの壱』から、そして『ちるらん』本編を応援していただけると幸いです。宜しくお願いいたします。
衣装/久芳俊夫(BEAMS)・横田勝広(YKP)
衣装協力/VIRUGO(ヴァルゴ)
ヘアメイク/加藤ゆい(fringe)・外山裕子(fringe)