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株式会社コアミックス代表取締役社長 堀江信彦インタビュー (2020年3月5日)
Interview
株式会社コアミックス
代表取締役社長
堀江信彦 インタビュー
(2020年3月5日)
堀江信彦(ほりえ・のぶひこ)
1955年熊本市生まれ。早稲田大学法学部卒業後、79年集英社入社。「週刊少年ジャンプ」の編集者として、原哲夫や北条司らと『北斗の拳』『シティーハンター』など多くの人気作品を生む。93年同誌5代目編集長に就任後、653万部という歴代最高部数を樹立。2000年退社後、原哲夫・北条司・次原隆二らとともに株式会社コアミックスを設立し、「週刊コミックバンチ」を創刊。04年まで編集長を務める。同年にはコンテンツ管理等を目的とした株式会社ノース・スターズ・ピクチャーズを設立(20年4月にコアミックスと合併)。09年吉祥寺に「カフェゼノン」を開業。10年「月刊コミックゼノン」創刊。13年まで編集長を務める。11年株式会社じぞう屋設立。北原星望のペンネームで原作者としても活動。
堀江信彦(ほりえ・のぶひこ)
1955年熊本市生まれ。早稲田大学法学部卒業後、79年集英社入社。「週刊少年ジャンプ」の編集者として、原哲夫や北条司らと『北斗の拳』『シティーハンター』など多くの人気作品を生む。93年同誌5代目編集長に就任後、653万部という歴代最高部数を樹立。2000年退社後、原哲夫・北条司・次原隆二らとともに株式会社コアミックスを設立し、「週刊コミックバンチ」を創刊。04年まで編集長を務める。同年にはコンテンツ管理等を目的とした株式会社ノース・スターズ・ピクチャーズを設立(20年4月にコアミックスと合併)。09年吉祥寺に「カフェゼノン」を開業。10年「月刊コミックゼノン」創刊。13年まで編集長を務める。11年株式会社じぞう屋設立。北原星望のペンネームで原作者としても活動。
コアミックスのこれからの役割
漫画ビジネスを取り巻く現状をどう感じていますか?
堀江:
AIやIT技術の進歩によって、出版・流通にとどまらず、漫画家一人ひとりの仕事のあり方にも大きな変化が起こっています。
これまでと同じ姿勢や物事の捉え方を続けていては、漫画ビジネスが立ち行かなくなる時代の大きな潮目に我々はいると感じています。
具体的な変化は、どのようなところで感じていますか?
堀江:
地方在住の漫画家の増加です。現在コアミックスの媒体に執筆する漫画家陣も、その半数以上が東京以外の地に拠点を構えています。彼らのアシスタントも漫画家の事務所に勤務するのではなく、インターネットを介して遠隔で漫画家を支えています。これは、以前は考えられなかったことでした。
また、漫画家志望者が作品を出版社に持ち込むことなく、WEB上で自由に発表や売買を行えるプラットフォームの整備が進んだことは、近年の大きな変化と言えるでしょう。
このような過渡期に、コアミックスが意識していることはありますか?
堀江:
出版社や編集部が集まっている東京にとらわれずに、漫画家としての活動を全国どこでも行えるような仕組みづくりです。これは漫画家から、これまで以上に頼りにされる出版社になれたらと思うからです。
仕組みづくりの一環として、2018年に、漫画家デビューを後押しするための拠点「コアミックスまんがラボ」を熊本にオープンしました。このラボと東京の編集部は、同時中継の大画面で常時つながっており、いつでも対話ができます。九州在住の漫画家が、ここで作品を東京の編集者に見せ、相談することが可能になりました。
また、熊本県高森町では、「くまもと国際マンガCAMP」を2018年に開始。世界各地の才能に集まっていただき、その育成の一助となる授業を行っています。現在、長期滞在して創作に専念できる施設の準備を同町で進めているところです。
漫画出版社として、他に意識していることはありますか?
堀江:
その時々の時代性や、作品が持つ客観的な価値を見極める機能が出版社には備わっており、ヒットする作品を生むにはそういった役割が不可欠であることです。
私自身、編集者として40年以上活動する中で、傑作と言われる数々の作品が、漫画家と編集者の協業によって産み落とされるのを見てきました。一人の人間がその能力や知見の範囲で作品を描き、ヒットさせるというのは稀有な事例です。面白い作品は世の中にあふれています。しかし、それが売れる作品になるとは限らないのです。売れるように、漫画家とともに努力する編集者、出版社の存在がこれからも欠かせません。
編集者と出版社の存在が大きなものだと理解できました。編集者に求められるものにも変化はありますか?
堀江:
あります。これからの編集者には、マーケットの多様化や広範囲化に対応できるグローバルな視点と、マーチャンダイジングの素養が今まで以上に求められることになるでしょう。
創立20周年の節目を迎える2020年に、事業を再編されるとうかがいました。
堀江:
これまでの体制では、版権ビジネスをノース・スターズ・ピクチャーズが、作品やコンテンツを世に送り出す制作機能をコアミックスが担ってきました。しかし、ノース・スターズ・ピクチャーズを統合する形でコアミックスに版権ビジネス機能を集約します。
これにより機動力を高めることで、さまざまな業種の企業、漫画家からのご提案を受け入れやすい体制を整えるためです。組織・個人を問わず、さまざまな将来的なパートナーとの結びつきを強めていきたいという意思表示でもあります。
結びつきを強めたいと考えるのはなぜでしょうか?
堀江:
ビジネスパートナーとともに夢を追う企業でありたい、ともにチャンスを掴み取る組織でありたいと願うからです。漫画作品から派生する版権ビジネスには、アニメ化、玩具化などある程度決まったかたちがあります。しかしその取り組みの一方で、既存の枠を超えたかたちを探り、時代に合った活用方法をいろいろなジャンルの方とともに模索していきたいと考えています。
企業や漫画家にはどんなメリットがありますか?
堀江:
企業であれば、我々の保有するキャラクターや世界観を使うことで、より多くの消費者に興味を持ってもらう取っ掛かりができます。言い換えれば、その商品に興味を持つきっかけとなる、「えくぼ」のような親しみやすさを提供できると考えています。開発した商品や技術の特徴をただ論理的に説明するだけでは、伝わりにくいところがあると思うので。
そして、そういったことから生まれた利益を漫画家に還元し、漫画文化の維持・発展へとつなげていけたらと思います。
最後に、コアミックスの今後のあり方について聞かせてください。
堀江:
私がよく社員に伝えているのは、「コツコツコツと仕事をしよう」という心得です。世の中には優秀な人が本当にたくさんいます。その中で抜きん出るには、コツコツにもう一つコツをつけるくらいの地道な努力の積み重ねが必要なんですね。
私が若い頃、ヒットメーカーの漫画家にうかがった忘れられない話があります。それは、ヒット作を生むことは、海に潜る行為に似ているという話です。海に潜ると息が続かなくて苦しくなる。漫画家もヒット作が出ないと苦しい。そんなとき、もう少しだけ我慢して続けてみる。そうすると、そこに大きなチャンスがある、という話でした。ほかの人が息苦しくなって途中でやめても、自分はもう少しがんばってみる。それが成功につながる大事なことかもしれないといまも思います。
創立20周年を迎えたコアミックスは次の20年、漫画の世界にイノベーションをもたらす存在であること、時代の求めに合った新しいものを生み出すことを見据え、コツコツコツと努力を重ねていけたらと考えています。
(2020年3月5日収録)
※情報は収録当時のものです。