社長インタビュー

Interview

株式会社コアミックス
代表取締役社長
堀江信彦 インタビュー
(2017年2月28日)

学び、育て、広げていく。
止まることを知らない、
“次の漫画”への挑戦。

COAMIX代表取締役社長 堀江信彦インタビュー Vol.1 THEME1

学び、育て、広げていく。
止まることを知らない、
“次の漫画”への挑戦。

THEME3

広がりゆくノース・スターズ・ピクチャーズが担う役割。
「電子書籍の波は、むしろ新しいチャンスだと思っている」

編集者の育成を含めて、漫画づくりに従事するコアミックス社に対して、ノース・スターズ・ピクチャーズ社には、どういった役割や目的があるのでしょうか。
堀江:
そもそも漫画というものは、他メディアになりたがるという性質を持っています。映画やドラマにゲーム、アニメーション……、そういった派生をしていって、それがまた漫画の魅力になっていきます。それをビジネスにしていくために、機能を分けました。それがノース・スターズ・ピクチャーズです。
昨今、漫画を原作にしたドラマや映画が多くなって、それ自体が揶揄されがちな状況も見られますが、どうお考えでしょうか?
堀江:
もともと手塚治虫先生は、動画のコンテを原稿用紙にレイアウトして、漫画にしていました。漫画は、はじめから動画のコンテとして成立するものです。だからドラマでも映画でも、漫画が原作になりやすいのは、当たり前の話だと思います。
時代的に、紙のメディアが主流ではなくなってきています。そういう意味でもノース・スターズ・ピクチャーズ社の担う役割は大きくなっているのでは?
堀江:
確かにインターネットが出てきてから紙のメディアは縮小傾向にありますが、電子書籍は伸びていて、漫画が占める割合も多いです。古くから漫画に携わってきた人は、紙が電子書籍に取って代わられることに対して抵抗感を示す人もいるようですが、僕はまったくそう思いません。むしろ新しいチャンスが来たと思っています。

代表取締役社長 堀江信彦

チャンスですか?
堀江:
例えば、電子書籍には「古い作品も、古い印象を与えない」というメリットがあります。紙の本だと20年前のものって古い感じがしますが、電子書籍だと古いものも新しいものも一緒です。また、時代的にも今の人間の感性って60歳も20歳も、それほど変わらないのではないかと思うんです。
確かに昔と比べるとそうかもしれません。
堀江:
僕は今62歳ですが、娘が好きなものは僕も好きだし、僕が好むものは娘も好んでいます。例えば音楽だって、ロックも聴くし、レゲエもラップも聴きます。世代的な違いはどんどんなくなっている気がします。僕が若いころは、ロックを聴いていましたが、父は演歌どころか、浪花節を聴いていました(笑)。こうなると意志の疎通は難しいですよね。でも今はそうじゃない。だから今後も、漫画はどんどん電子メディアに馴染んでいくし、チャンスは広がっていくと考えています。

今後の構想として、どういった展開を考えていますか?
堀江:
「技術」として漫画を教えていきたいですね。というのも、漫画のネームが作れるというのは、すごく貴重なスキルであり、さまざまに役立つはずです。漫画のコンテが描ければ、映画のコンテも描けるし、CMのコンテも描ける。プレゼン資料のコンテも描けると思います。私たちはそういったお手伝いができるんじゃないかと考えています。
漫画の技術は、他のジャンルにも適用することができるんですね。
堀江:
人に理解されやすく、情報を伝えることができるし、レイアウトのセンスも磨かれる。それは漫画家だけに重宝される技術ではないはずです。そういった漫画に関わる技術を若い人たちに浸透させたいという希望があれば、ぜひ声をかけていただきたいですね。
確かに一般的なビジネススキルとしても重宝されそうですね。
堀江:
あとは、他メディア化にも、さらに力を入れていきたいですね。映画やゲーム、おもちゃ、飲食、日用品……よい作品は何にでも変化します。他には、例えば劇団をつくって、私達の作品を小劇場なんかで演劇をやるのもおもしろいな、なんて考えています。
それはいいですね!
堀江:
「演劇になったら、どうなるか」って、見てみたいですよね。 そうやって、作品のことを愛してくださるファンの方々に還元していきたいと思っています。そしてもう1つ。やはり海外の漫画家を育てることです。そのためにも、まずは編集者の技術をより高いものにしないといけない。“漫画の研究所”として編集部を強化していって、編集集団として成熟させることが重要ですね。
海外の作家さんに向けた『サイレントマンガオーディション』もすでに7回目(2017年3月現在)を迎えたところです。手応えはどうでしょう。
堀江:
感触はとてもいいですね。ブラジル、インドネシア……本当に世界にはすごい才能を持った作家さんがいます。彼らがもし日本にいて、日本語を使っていたら、すでにヒット作を持つ漫画家になっていたかもしれません。だから、日本の漫画作品だけでなく、漫画づくりのシステム自体を輸出することで、彼らに現地で漫画家として活躍してもらいたい。そうすることで、「漫画っておもしろい」と思ってもらえるだろうし、日本の漫画ももっと読まれるようになる。これからも、”漫画にマジメ”という理念のもと、漫画全体の市場が広がっていくことを願っています。

(2017年2月28日収録)
※情報は収録当時のものです。