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株式会社コアミックス代表取締役社長 堀江信彦インタビュー (2017年2月28日)-THEME2
Interview
株式会社コアミックス
代表取締役社長
堀江信彦 インタビュー
(2017年2月28日)
学び、育て、広げていく。
止まることを知らない、
“次の漫画”への挑戦。
学び、育て、広げていく。
止まることを知らない、
“次の漫画”への挑戦。
THEME2
狩猟型ではなく、農耕型の出版社に。
「売れるべくして売れる作品づくりに取り組んでいる」
編集者の技術の中には、漫画づくりの現場の中で培うものもありますよね?
堀江:
新人作家さんたちとネームのやりとりから理解していくものもたくさんあって、そっちの方がより実践的で、かつ、巡り会いもあります。どれだけ編集者が頑張っても、1人の天才的な才能を持った作家さんには勝てないこともあります。才能のある作家さんと一緒に苦しみながら漫画をつくることで、編集の技術が磨かれる。だから今は新人作家さんをたくさん受け入れて、巡り会いに期待している時期でもあります。
作家さんと編集者が互いに育て合うんですね。
堀江:
そうすることで、作家さんも一発屋で終わることがなくなります。きちんとした技術のある編集者と組めば、偶然のヒットではなくなります。我々はどちらかというと、“農耕型”の出版社かもしれません。種を蒔いて、手間ひまをかけて育て、出来上がったらまた来年のために種を蒔いて……。
農耕民族である日本っぽくていいですね(笑)
堀江:
漫画に限らず、モノっていうのは85点の出来でなんとか商売になると思います。100点じゃなくても大丈夫。でも70点では厳しい。そして、ほとんどの漫画家さんは70点くらいのものは最初から描けます。残りの15点をどうやって埋めるかが、編集者の実力であり、頑張りどころだと思っています。 もちろん最初から85点を超えている人もいます。でもそれはラッキーでしかない。そういう作家さんに対しては、「ありがとうございます。先生、がんばってください!」って(笑)。85点に引き上げたい作家さんのために、私達は編集者やマンガ家を育てるためのノウハウをたくさん持ち、売れるべくして売れる作品づくりに取り組んでいます。
決して偶然とか“勘”で生まれるものではないんですね。
堀江:
そのためにヒット作品の研究・分析も積極的に行っています。たとえば私達が「ピッチ」と呼んでいる分析方法があります。これは作品のシーンをバラバラの短冊状に切って、壁一面に貼り、再構成するというものです。編集者や漫画家はこれを何度も繰り返すことでいいモノが作れるようになるし、新人が悩んでいる時にも、描いてきた作品に「ピッチ」をかけてみると、弱点がすぐに分かります。
そういった訓練を日常的に行っているんですね。
堀江:
こういう方法を覚えておくと、海外の作家さんと作品づくりを行うときにも、合理的に話し合うことができます。「日本人同士だから分かる、暗黙の了解」というレベルを超えて、きちんと言葉で説明ができるようになる。そうやって編集者の言葉を磨くことが大切ですね。
堀江社長自身も編集者として、北条司先生や原哲夫先生など、日本を代表する漫画家さんとともに、たくさんの作品を生み出してきました。北条先生や原先生の新人時代を覚えていますか?
堀江:
よく覚えています。原先生が、とにかくすごかったのは、“人を殴る絵を、やたら痛そうに描ける”ところでした。これに関しては本当にすごかった。「この漫画は、めちゃめちゃ痛いな」なんて言っていたのを覚えています。
北条先生がはじめに送ってきた新人賞の作品は、すでに「きっとすごく上手くなるだろう」っていう線を持っていました。あと、“絵が大きく見える”っていう特徴がありました。彼の作品は、コマ数が多いから、絵は小さくなるはずなのですが、人物がすごく大きく見えます。『北条マジック』です。
後に大ヒットを生む先生でも、はじめから100点だったわけではないんですね。
堀江:
もちろんです。それよりも、コマ割りによる演出に1つだけでも秀でているところがあるかどうか。大事なのはそこなんです。絵が下手でもいいんです。その着眼点で選定すると、たくさんの才能を生み出せるのではないかと思っています。
そこを見極めるためにも、やはり編集者の技術が大切なんですね。
堀江:
せっかく漫画家になりたいと思って小さな頃から漫画の勉強をしていた子がいたとしても、才能を見抜く側に能力がなかったらかわいそうですよね。『月刊コミックゼノン』をスタートした時に、そういう視点から新人さんを育てたいという思いが強かったので、セリフなし・演出力のみで審査する「マンガオーディション」という新人賞をはじめました。
『サイレントマンガオーディション』は、その考えが海外にまで及んだ、ということですね。
堀江:
作品全体のまとまりではなく、演出を評価するという方法が好評だったので、今度は海外でもやってみることにしました。今では年間1000以上の作品が集まる国際的な漫画賞になりました。だから、本当に才能のある作家さんの見極め方も、編集者が備えておくべきテクニックだと思います。
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