社長インタビュー

Interview

株式会社コアミックス
代表取締役社長
堀江信彦 インタビュー

2025年6月14日、おかげさまでコアミックスは創立25周年を迎えました。
節目のいま、会社と社員について思うことを、代表取締役社長の堀江信彦に聞きました。

  • 堀江信彦(ほりえ・のぶひこ)/1955年熊本市生まれ。早稲田大学法学部卒業後、79年集英社入社。「週刊少年ジャンプ」の編集者として、原哲夫や北条司らと『北斗の拳』『シティーハンター』など多くの人気作品を生む。93年同誌5代目編集長に就任後、653万部という歴代最高部数を樹立。2000年退社後、原哲夫・北条司・次原隆二らとともに株式会社コアミックスを設立し、「週刊コミックバンチ」を創刊。04年まで編集長を務める。同年にはコンテンツ管理等を目的とした株式会社ノース・スターズ・ピクチャーズを設立(20年4月にコアミックスと合併)。09年吉祥寺に「カフェゼノン」を開業(24年「ギャラリーゼノン」に名称と業態を変更)。10年「月刊コミックゼノン」創刊。13年まで編集長を務める。11年株式会社じぞう屋設立。20年には女性だけの歌劇団「オクロック熊本歌劇団」創立。24年同劇団の拠点となる劇場と、漫画の原画を展示するギャラリーを併設した施設「熊本マンガアーツ」を市内に開設。北原星望のペンネームで原作者としても活動中。

COAMIX代表取締役社長 堀江信彦インタビュー Vol.3

2025年6月14日、おかげさまでコアミックスは創立25周年を迎えました。
節目のいま、会社と社員について思うことを、代表取締役社長の堀江信彦に聞きました。

  • 堀江信彦(ほりえ・のぶひこ)/1955年熊本市生まれ。早稲田大学法学部卒業後、79年集英社入社。「週刊少年ジャンプ」の編集者として、原哲夫や北条司らと『北斗の拳』『シティーハンター』など多くの人気作品を生む。93年同誌5代目編集長に就任後、653万部という歴代最高部数を樹立。2000年退社後、原哲夫・北条司・次原隆二らとともに株式会社コアミックスを設立し、「週刊コミックバンチ」を創刊。04年まで編集長を務める。同年にはコンテンツ管理等を目的とした株式会社ノース・スターズ・ピクチャーズを設立(20年4月にコアミックスと合併)。09年吉祥寺に「カフェゼノン」を開業(24年「ギャラリーゼノン」に名称と業態を変更)。10年「月刊コミックゼノン」創刊。13年まで編集長を務める。11年株式会社じぞう屋設立。20年には女性だけの歌劇団「オクロック熊本歌劇団」創立。24年同劇団の拠点となる劇場と、漫画の原画を展示するギャラリーを併設した施設「熊本マンガアーツ」を市内に開設。北原星望のペンネームで原作者としても活動中。

会社は公器。社員は職人。
それがコアミックスです。

今年で創立から四半世紀です。いま、コアミックスという会社とその社員について、思うことをうかがえますか?
堀江:
コアミックスという会社は、公器です。言い換えると、経営者や株主のものではなく、社員みんなのものであるということです。公器であるからこそ、それぞれが自分の持ち場で努力し、協力し合い、みんなで幸せになることをめざしています。
何をする会社かといえば、コンテンツを生み、ヒット作に育てる会社です。コンテンツづくりは、0から1を生み出す行為です。これには大変な労力と時間がかかります。そして、生み出されたコンテンツをヒット作に育てることは、走りながら針の穴に糸を通すようなものです。それらを続けていくためには、探究心と向上心を持った一人ひとりが力を合わせ、知恵を絞る必要があります。
そのため、「職人であれ」と私は社員に話しています。職人とは、自分の仕事に対し、100%のことをしてもまだ足りないと思える人のこと。たとえ周りの人がほめてくれたとしても、「まだ足りない。もっとできたはず」という反省がいつもある人です。コアミックスは、そんな職人集団であれたらと思います。
そして、「コツコツにもう一つコツを付けて、“コツコツコツ”で仕事をしよう」。そんなことも、社員によく話しています。すぐれた企業は山ほどあり、優秀な人は星の数ほどいます。そんな世の中で、私たちが結果を出し続けていくためには、継続する根気強さと、あきらめないことがなによりも大事です。
振り返れば、「週刊少年ジャンプ」で漫画編集をしていた頃、周囲にはすぐれた人たちが大勢いました。そんな中で私が編集長を務めることができたのは、高い能力があったからではなく、“コツコツコツ”で仕事をする根気があったからにほかなりません。そういったことをはじめ、今年70歳になる私なりに思うことを、社員との会話を通して伝えられたらと思っています。

コアミックス

コアミックスは近年、漫画家育成に注力しています。その狙いをうかがえますか?
堀江:
私たちが力を入れていることに、漫画家の育成があります。創業から25年が過ぎ、国内では少子化が進みました。漫画家になりたい人の比率は増えていると言われますが、絶対数は減っていると私は見ています。そんな状況では、これまでと同じように持ち込みに対応し、漫画賞を開いて賞を授与するだけでは、やがて限界が来ます。育成するための場をつくり、自分たちから声をかけて招聘し、プロの漫画家に育てていく必要があります。
そのため、約50人が居住できる住居棟と食堂を、第二本社を置く熊本の阿蘇に開設しました。コロナ禍が明けた2022年から、ここに国内外の漫画家や漫画家志望者を招いています。生活費の不安のない環境で、常駐しているコアミックスの漫画編集者の支援を受けながら、いま30名近くが才能を磨き、コアミックスの媒体での連載やアシスタント活動に取り組んでいます。

熊本漫画家育成

漫画家育成では、高森高校マンガ学科にも全面的に協力しています。2021年9月、第二本社のある高森町、熊本県教育委員会、高森高校、コアミックスの四者で協定を結び、23年4月に同学科は開設されました。マンガ学科は、日本の公立高校では初の事例です。あらゆる高校生に平等に機会をと、私立ではなく公立に開設できたことは、これからの日本の漫画界にとって大きなことではと思います。出願倍率は4.18倍(2025年度前期)と高く、全国各地から中学生が見学に訪れ、受験しています。

高森高校マンガ学科

コアミックスは、マンガ学科への講師派遣、教科書作成のほか、放課後の部活動である「マンガ部」の支援もしています。普通科にも、漫画を描きたい生徒はいます。そういった生徒にも、漫画の描きかたを学ぶ機会を提供できたらと、コアミックスの漫画編集者が入れ替わりで毎日同席し、サポートしています。
また、熊本の阿蘇で漫画家育成に努めていて、気づいたことがあります。それは、自然豊かな阿蘇で過ごしていると、自然にひそむ美を多く発見する、ということです。雲の割れ目から射し込む光、遠景の色彩のグラデーション、雨の日の水墨画のような景色……。美しいものを見た人は美しいものを描けると思います。阿蘇の自然は美の宝庫です。そんな環境で、切磋琢磨してもらえたらと思います。